スペイン南部アンダルシア地方で生まれたシェリー酒と、各地に根付く個性豊かなチーズ。地中海の風土が育んだこの二つは、相性抜群の組み合わせとして知られています。熟成庫で長い時間をかけて育まれるシェリー酒の奥行きある味わいと、山岳地帯や島々でつくられるチーズの多彩な風味。その歴史や文化を知ることで、今回のイベントをより一層楽しんでいただけます。
伝統的な製法が息づく、スペイン各地のチーズ。味わいは地域ごとに驚くほど異なる。
長い柄杓「ベネンシア」を使い、高度な技術でシェリー酒をグラスに注ぐ職人。
白壁のアーチに樽が並ぶ、アンダルシア地方特有の熟成庫「カテドラル式ボデガ」。
アンダルシアの陽光が育むシェリー酒
スペイン南部アンダルシア地方は、シェリー酒発祥の地として知られています。ブドウ畑を覆う白いアルバリサ土壌は水分を蓄え、強い日差しの中でも葡萄を健やかに育てます。シェリーは「ソレラ・システム」と呼ばれる独特の熟成法によって、複数年の原酒が絶妙にブレンドされ、唯一無二の味わいを生み出します。辛口から甘口まで幅広いスタイルがあり、その多様性が世界中の食通を魅了してきました。
個性豊かなスペインチーズの世界
スペインには約150種以上のチーズが存在し、地域ごとの気候や家畜の種類によって味わいが大きく変わります。カナリア諸島の「マホレロ」は山羊乳特有のコクと香ばしさが特徴。ラ・マンチャ地方の「マンチェゴ」は羊乳由来の濃厚でナッツのような風味をもち、世界的にも評価が高い一品です。これらのチーズは土地の文化や歴史を映す存在であり、食卓に地域性を豊かに映し出しています。
ベネンシアドールの妙技
シェリー酒の世界には「ベネンシアドール」と呼ばれる専門職人がいます。細長い柄杓「ベネンシア」で樽からワインをすくい、離れたグラスに正確に注ぐ技術は熟練を要します。この所作はただの提供ではなく、スペインのもてなしの美学そのもの。会場でベネンシアドールの姿を目にすれば、観客はその瞬間からシェリーの奥深い文化を体験できるでしょう。
チーズとシェリーの黄金の組み合わせ
スペインでは古くから「土地の酒と土地の食材はよく合う」と言われます。熟成の進んだハードタイプのチーズには、香ばしいナッツ香のオロロソが絶妙。逆に軽やかなフレッシュチーズには、爽快なフィノやマンサニージャがぴったり寄り添います。甘口のペドロ・ヒメネスはブルーチーズと合わせると、驚くほど調和した味わいを見せてくれます。この組み合わせの妙こそ、イベントで堪能いただきたい最大の魅力です。


